修 士 論 文 |
1985 |
卒 業 論 文 |
1985 | |||||||
1986 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1986 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | |
1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | |
1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | |
2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | |
氏名:阿部浩二
主題:保健体育科の器械運動領域における生徒の内発的動機づけを高めるための指導法に関する研究
本研究の目的は、保健体育科の器械運動領域での生徒の内発的動機づけに影響を与える要因について調べ、それらをもとにした具体的な指導法を行うことによって、生徒の内発的動機づけがどのように変容するのかを実証的に検討することであった。
研究Tや研究Uにおいて得られた結果から、保健体育科の器械運動領域における内発的動機づけを高めるためには、統制感を高めることが重要であると示唆された。
そこで研究Vでは、マット運動の学習においてスモール・ステップで学習することに加え、努力帰属を促す自己評価をさせることにより、統制感を高めることを試みた。
この結果、内発的動機づけ全体までは高まらなかったものの、生徒の統制感を高めることができた。この種目と類似した特性をもつ他種目や他領域にこの指導法を応用することにより、保健体育科における生徒の内発的動機づけを高めることができると思われる。
氏名:大田謙二
主題:自己評価過程における教訓産出が児童の算数学習に及ぼす影響
本研究は,算数科における自己評価過程に「書く」活動を位置づけ,言語記述内容の様相,有効な記述(教訓)の産出が児童の算数学習に及ぼす影響について検討することを目的とした。研究1における「明示的な教示文」を基に作成した「アウトライン生成」条件,比較条件として「到達度自己評価」条件を設定し両条件を比較・検討していった。実験の結果,記述得点と理解度テスト得点及び質問紙調査によって得られた他の従属測度共に,「アウトライン生成」条件の方が「到達度自己評価」条件よりも有意に高かった。そして,児童が学習において自己評価シートに記述した内容と,事後調査における自分の誤答傾向箇所との一致度についても「アウトライン生成」条件の方が有意に多いことを併せ,「アウトライン生成」条件の自己評価シートが「到達度自己評価」条件よりも有効な記述(教訓)の産出を促し,児童の学習理解を高める可能性が示唆された。
氏名:松久保鉄也
主題:児童の算数文章題解決に影響を及ぼす問題解決方略の教授法に関する研究
本研究は,方略の適切な使用と有効感を高める教授法の有効性を検討することが目的であった。方略の使用には,使用に対するコスト感と有効感の関連や方略使用のモニタリングの重要性が指摘されているが,これらについて検討した実証的研究はほとんどない。そこで,方略の調査・分析から6方略を同定した。さらに,文章題の解決で児童がつまずきやすい理解過程で主に活用される具体的思考支援,情報抽出の2方略が,使用と有効感が低くコスト感が高いことがわかったため,この2方略にポイント抽出方略を加え教授を行った。社会的スキル訓練の技法と,方略の使用をワークシートを使って意図的にモニタリングさせる活動を取り入れた教授法を実施した結果,実際の文章題解決で測定された結果と文章題認知測定,モニタリング測定から教授の効果が認められた。方略では,ポイント抽出,具体的思考支援の2方略の使用,コスト感,有効感に教授の有効性が認められた。
氏名:三星喬史
主題:児童の癒され感を支える学級集団構造とコンサルテーション的アプローチによる構造改善に関する研究
本研究の目的は,学級集団構造を明確にとらえ,学級から児童が受ける癒され感との関係を明らかにし,コンサルテーション的アプローチによる学級集団構造の改善が癒され感に及ぼす影響を検討することであった。学級風土が児童の情意に影響を及ばすことは従来より指摘されてきている。しかし,学級風土を規定する学級集団構造と情意とを検討した実証的研究はほとんど見られず,また情意の中の一つである癒され感を小学生対象に検討した実証的研究は見られなかった。そこで学級集団構造が癒され感に及ぼす影響を明らかにした上で,担任教師の自己効力感や自尊感情などを低下させずに構造改善を行う方法としてコンサルテーション的アプローチという手法をとった。学級集団構造の不足している次元に対してコンサルタントと担任が共に話し合いながら改善の方向を決定していった。この時コンサルタントは自分の意見は極力出さずに担任の意見を尊重しながらよりよい方向へと導くように努めた。A学級では3つ,B学級では6つのソーシャルスキルトレーニングを行ったところ,いくつかの従属変数においてコンサルテーション的アプローチの効果が認められ,学級集団構造改善のためのコンサルテーション的アプローチの有効性および学校教育への導入の可能性が示唆された。
氏名:加藤 寧
主題:共同学習における学習内容に関する成員間相互説明過程の段階的構成が児童の知識獲得に及ぼす影響
本研究の目的は,小学校の教科の中で指導される学習内容について,小集団の相互作用を用いた段階的な説明プロセスが児童の知識獲得に及ぼす影響を検討することであった。段階的な説明とは,自分の意見を説明する(段階1),他者の意見を説明する(段階2),自分の意見をまとめる(段階3),グループの意見をまとめる(段階4)の各段階を踏むことである。実験の結果,段階的説明を用いた条件が統制条件よりも知識テスト及び概念地図テストで有意に高かった。また,発話分析では「繰り返し説明」及び「意見統合説明」と知識テスト得点及び概念地図テストで正の相関がみられた。話合いに対する児童の認知でも段階的説明に満足していた。以上の結果から,段階的説明モデルによる話合いが児童の知識獲得に効果的であり,段階的説明モデルを使った児童自身も話合いに満足することが示唆された。
氏名:根之木 茂
主題:児童に対する協同的小集団学習のためのリーダーシップ教育に関する研究
本研究は,学級単位によるリーダーシップ教育プログラムの有効性を検討することを目的とした。協同学習におけるリーダーの重要性は指摘されているが,リーダーの行動や特性との関連について検討した実証的研究は少ない。そこで,まず三隅(1986)のリーダーシップPM理論の知見が,協同学習における班長のリーダーシップについても見いだせるのかを検討した。その結果,話合い場面においてあてはまる可能性が示されたため,話合い場面に絞ってプログラムの開発を行った。社会的スキル・トレーニングにロールプレイを加えるなどして開発したプログラムを実施した結果,リーダーシップ行動に対する自信や意欲の促進,リーダーシップ行動への構えの促進という点において効果が認められた。特に班長に関しては,運営・進行に関連する発言や積極的P行動関連発言の促進,運営・進行に無関連な発言の抑制という点において効果が認められた。
氏名:平尾 昌義
主題:社会科地理的分野の学習に対する生徒の自己効力感に関する研究
本研究の目的は、社会科地理的分野の学習に対する生徒の自己効力感の構造と実態を明らかにし、その中から特に必要性のある領域を選択し、その自己効力感を高めることが目的である。研究Tの結果、地理学習自己効力感は、「地理課題の思考」「思考内容の整理」「興味の拡大」「地理用語の暗記」「学びへの参加」「パソコンの利用」の6領域から構成されていた。領域間では、「地理課題の思考」は、他の領域よりも自己効力感と効果度認知が低かった。「地理課題の思考」を対象にした研究Uの結果、実験セッションにおいてワークシート条件の効果が部分的にみられた。また、モニタリング傾向は、事後の自己効力感、コスト認知、及び理解テストで効果がみられた。課題として、「ワークシートの改善」「モニタリングの正確性と随伴性認知」「学習課題と時間の設定」「個人内の基準のちがい」が挙げられる。
氏名:薮本 好央
主題:児童に対する自己調整学習方略訓練に関する研究
本研究の目的は,学級単位による自己調整学習方略の訓練方法の有効性を検討することであった。訓練対象としては予備調査で同定した4方略の中から“リハーサルと記憶”方略をとりあげた。訓練方法の構成はソーシャル・スキル訓練の「インストラクション,モデリング,練習,フィードバック,定着化」という構成を用い,訓練方法の有効性を実験的に検討した。実験の結果,本研究の訓練方法によって記憶課題の遂行における方略使用が促進され,児童は方略を有効に使用できるようになった。また,日常的な場面での方略使用や方略に対する有効性の認知も高まった。本研究で用いた訓練方法は有効であり,学級単位による自己調整学習方略訓練の学校教育への導入の可能性が示された。
氏名:坂井 智
主題:自尊感情と対人認知ー社会認知的アプローチによる検討ー
本研究は様々な他者と関わりあいながら生活しているが適応した生活を営むためには他者の心理的な状態や特性について正しく知る必要がある。しかし,対人認知は様々な要因(被験者の外見的特徴・性格特性)によって容易に影響を受け,人それぞれ異なっている。そこで本研究は,認知者の性格によって対人認知が異なる現象を社会認知心理学の中で提唱されている対人認知の2段階モデルによりその詳細なメカニズムを明らかにすることを目的とした。本研究では,性格特性の中でも対人認知に影響を及ぼす重要な変数である自尊感情を取り上げ,自尊感情の高い人が低い人よりも肯定的な対人認知をする心理的メカニズムの違いにせまった。
氏名:岡田 昭彦
主題:社会科の授業過程における小集団相互作用が生徒の知識構造の変容に及ぼす影響
本研究は、中学校の社会科の授業過程において、小集団での成員どうしの質問の仕方による学習者の知識構造の変容を問題とした。学習者が単独で新学習内容を既有の知識構造に取り込むときに起こりうる問題点から、他者との関わり、さらに相互作用における質問の仕方の重要性を指摘した。これらの諸点に対応する研究と評価したKing(1994)の考えに立ち、学習過程の時点ごとに生徒の知識構造を抽象することで知識構造の変容を測定し、一方他者と相互作用することの効果について観察を行った。なお、相互作用のとき概念間の関係から新学習内容をとらえやすくするために概念地図を使用した。結果、新学習内容を相手の経験に結合できる質問を互いにする相互作用は、学習者の知識構造の変容を促進させ、安定した知識構造をもたらし、新学習内容を長期的に保存させることなどが示された。
1999年度
氏名:伊村 洋之
主題:ティーム・ティーチングにおける教師の児童支援行動に関する研究
本研究は、小学校ティーム・ティーチング(1C2T)における児童支援行動(教師による個々の児童に対する支援行動)について、算数科を対象教科として実証的に研究した。T・T導入の目的の一つである「個に応じた指導」に焦点を当て、児童支援行動の実態について授業観察を通して明らかにするとともに、実験的介入による児童支援行動の量的増加が児童や教師に及ぼす影響並びに2人の教師の空間的位置と児童支援行動との関係について検討した。その結果、実際の児童支援行動が量的に十分でない事実、そして行動の量的増加が児童の情意的評価及び協力者として参加する教師の児童認識に好影響を与えるという示唆、さらに教室内に2人の教師が存在することによるT・Tアクション・ゾーンの存在可能性などをえることができた。
氏名:清水 孝
主題:算数科における問題解決型授業の評価に関する研究
本研究は,小学校算数科における問題解決型授業が児童の問題解決能力(モニタリング能力3因子,「使用方略のレベル」,「解答の正誤」)にどのように影響を及ぼしているのかを調査研究したものである。因子分析により問題解決型授業の7因子(「方略指導」,「個人指向場面の保障」,「考え方の評価」,「集団思考場面の保障」,「力動的な流れ」,「意図的なステップ化」,「見通し」)が抽出された。問題解決型授業H群(各因子得点>中央値)は問題解決型授業L群(各因子得点<中央値)に比べて,モニタリング能力の3因子得点が有意に高かった。しかし,「使用方略レベル」得点,「解答の正誤」得点は有意に低かった。また,分散分析,重回帰分析の結果,モニタリング能力「解法の検索」に対して,「方略指導」,「個人思考場面の保障」,「集団思考場面の保障」,「力動的な流れ」の4因子が高める方向で働いていることが考えられた。
氏名:望月 俊昭
主題:授業における児童の自己評価過程に関する研究
本研究では、授業における児童の自己評価過程について、「自己評価の機序」および「評価の視点」という側面から明らかにすると共に、自己評価能力の育成について検討した。自己評価の機序には一定の様式があり、評価の視点は6つの自己評価次元に大別できることが明らかになった。自己評価能力の高い児童と低い児童との自己評価過程の違いを探ることにより、「学習態度や発表の視点を重視して自己評価を行うこと」、「自己評価の視点を弁別的に用いること」、「明確な評価基準を持ち、その基準を自分自身の中に設定すること」、「より多くの視点から自分自身を吟味するという意味でも、自らの学習を時系列的に振り返ること」等を指導していくことが、児童の自己評価能力の育成につながると示唆された。
氏名:黒木 貴
主題:授業過程における児童の自己決定感と学習意欲に関する研究
本研究は、一斉学習での授業過程における、児童の自己決定感と学習意欲との関係を検討することを目的とした。自己決定感については、4つの次元(学習内容・計画,解決方法,発表・表現,学習形態・組織)によって解釈された。また、一斉学習での自己決定場面の設定が、児童の自己決定感や学習意欲に及ぼす影響について算数科で実験的に検討した結果、自己決定場面を設定した学級では、児童の学習意欲や自己決定感が高まることが示された。さらに、自己決定感の高い学級の授業においては、教師が、決定した内容に対する確認や評価を児童に促す発問や、学習内容の決定に関する発問を、数多く用いていることが示された。本研究の結果は、一斉授業においても、児童の自己決定感を高めることが可能であり、それを1つの要因として児童の学習意欲が高まる可能性を示唆している。
氏名:山本 雅司
主題:体育学習における学年ティーム・ティーチングの影響
副題:めあて学習を基盤とする器械運動領域の授業を通した検討
本研究は、体育科のめあて学習を基盤に、器械運動領域に限定し学年TTを導入した場合の学習者に及ぼす影響、及びその過程について明らかにすることを目的とした。因子分析の結果得られた行動レベルの5因子(自発的学習、相互支援、賞賛、阻害、教師支援)、認識レベルの4因子(向上、学習の共有、不安、フロー体験)を基にパスダイヤグラムを作成し、変数間の関係から学年TTの特徴を検討した。その結果、「学習の楽しさ」について学年TTでは「自発的学習」の直接効果と「向上」を介しての間接効果が見られた。また、実態からのパスを見ていくと、運動や体育学習の好き嫌いは、「技能に対する有能感」以上に「運動や体育学習が楽しい」と感じることに依存していることが示された。本研究の結果は、学年TTでの学習で「自発的学習」がより重要な影響を与えること、「相互支援」「学習の共有」が「運動の楽しさ」にも影響することを示唆している。
氏名:根木 勝広
主題:児童の絵画鑑賞の視点に関する研究
本研究は、児童の絵画鑑賞次元を明らかにするとともに、児童の性別、図工学習に対する関心度、家庭の美術環境度の違いや絵画解説、絵画の題名提示によって次元ウエイトがどのように異なるか検討したものである。児童の絵画鑑賞の次元として5つの次元が抽出された。また、男子より女子の方が全体的に次元ウエイトが高いことがわかった。絵画解説については、特定の次元ウエイトを高めることがわかった。絵画解説の経験は、絵画の題名提示によって特定のカテゴリーの記述数に影響を与えることもわかった。
氏名:桑田 隆男
主題:児童の個性に対する教師の認知に関する研究
本研究は、個性を生かす教育の基礎研究として、児童の個性に対する教師の認知とその影響について検討した。主な結果は以下の通りである。教師は、基本的生活習慣、社交性、温厚性、自己主張性、聡明性、感性といった6つの次元を用いて児童の個性を認知していた。特に、自己主張性や社交性の次元を暗黙裡に重視していた。また、次元ウエイトの様相が児童の性によって異なっており、女児に対しての方が男児に対する場合よりも重視していた。しかし、担当学年や教師の性、経験年数による違いは見られなかった。さらに、多次元を重視して児童の個性を認知している教師の方がそうでない教師よりも、子どもに対して柔軟に対応をしていたこと、また、多次元を重視して児童の個性を認知している教師が受け持つ学級の子どもたちの方が教師から見られた自己をより肯定的に認知していたことが示された。
氏名:三栖 龍二
主題:ティーム・ティーチングにおける教師の指導行動に関する研究
本研究は、効果的にTTを行うための方法を教師の指導行動の面から検討したものである。まず研究TではTTにおける教師の指導行動(TT支援行動)を明らかにするためTTを実践している教師より支援行動の収集を行った。次に研究UではTT支援行動の効果について実証的な検討を試みた。児童が回答した質問紙を因子分析することにより、TT支援行動が「親和的理解促進(U)」「個人的配慮確認(C)」「学習喚起(A)」の3つの行動次元から構成されていることが明らかとなった。次いで分散分析を行った結果、TT支援行動の主導者、優位性及び遂行度の要因によって、TTの効果に有意な差が認められた。このことにより誰(TT担当教員or担任)が、どのような行動(UorCorA行動)をどの程度行えば、効果的にTTを行えるのかという具体的な方法の示唆に些少ながら貢献できたものと考える。
氏名:曽良 浩章
主題:小集団学習における成員間相互作用と学習理解に関する研究
副題:メンバーからの質問に対する説明の役割分担の効果
本研究は、相互教授活動において、成員からの質問に対する説明の役割分担が成員間相互作用と学習理解にどのような効果を及ぼすかを検討したものである。小学校6年対象、3人異質能力グループ編成。役割分担条件(役割分担あり、役割分担なし)×学力(低、中、高学力児童群)の2要因計画。相互作用の分析結果、『高レベルの説明』は条件間に差異はなかったが、『低レベルの説明』は役割分担あり条件で多く行われ、『誤答』『沈黙』は役割分担なし条件で多くみられた。『低、高レベルの説明』においては役割分担あり条件では低、中、高学力児童による説明頻度に差異はなかったが、役割分担なし条件では説明頻度に偏りがみられ、とりわけ高学力児童が低学力児童に比べ、説明頻度は高かった。『低、高レベルの説明』は学習理解と関係し、『沈黙』は学習理解と負の関係にあった。教材の理解度に関しては、自由記述テストで役割分担の効果がみられただけであった。
氏名:越野 和胤
主題:算数文章題の解決過程における児童のモニタリングに関する研究
本研究は、算数文章題の解決過程における、児童のモニタリング・コンポーネントを明らかにするとともに、モニタリング活動を高める訓練の可能性を検討したものである。問題解決過程は、(1)必要情報の抽出・推論過程、(2)文の表象の関係づけ推論過程、(3)解決のためのプラン過、(4)演算操作過程の4つの下位過程から構成されるととらえた。(1)と(2)の下位過程でのモニタリング・コンポーネントには、「解決方略の予想」と「必要情報の点検」の2つがあると考えられ、これらの活性化の程度と得点には関連が見られた。よって、「必要情報の点検」のコンポーネントを活性化するために、点検の視点を明確にしてモニタリング技能を高める訓練を行った。「課題得点」や「確認行動」の分析より、次のような結果を得た。@課題得点の伸びが見られた。Aモニタリング活動が(3)と(4)の過程で活発に行われ、課題によっては(1)と(2)の過程でのモニタリングの時間も長くなった。
氏名:薩川 浩
主題:ピア・チュータリングにおけるチューティの質問のタイプが教材理解に及ぼす効果
本研究では、ピア・チュータリングにおいて、教えられる者 (以下チューティ) が、教える者 (以下チュータ) に対して行う質問の水準の違いがチュータ及びチューティにどのような効果を与えるかについて検討を加えた。研究Tの実験計画は、質問条件 (思考型質問条件、原因型質問条件、質問活動無し条件) ×学力 ( 高群、低群) 、研究Uは、質問条件(関係型質問条件、原因型質問条件)×学力(高群、低群) の2要因計画であった。研究T、Uを通じ、思考型質問及び関係型質問を使用した質問活動を行うことは、チュータの学習課題の理解度を高め、特に、時間ェ経過してからは低学力群のチュータにおいて保持を高める効果が出現することが明らかとなった。
氏名:恵良 博美
主題:児童の自己概念に関する研究
本研究は、児童の自己概念を明らかにし、自己意識と自己概念の次元性との関係、および、自己概念の次元性ならびに個人志向性と行動傾向(自分の考えに基づいて行動している)との関係を明らかにすることを目的とした。自己概念は12のカテゴリーに分類され、また、このカテゴリーが多次元にわたっているものがいる一方で少ないものがいた。そこで、この次元性に関係すると思われる自己意識との関係を検討したところ、自己意識が高いほうがより自己概念が多次元であった。さらに、自己概念が多次元的であり、個人志向性が高いものは、自分の考えに基づいた行動をとっていると教師や仲間の児童に評価された。本研究は、個性を生かす教育を考える基礎的研究として行われたが、個性を生かすためには、児童に自己を意識する習慣をつけさせ、自分を多くの視点に立ってとらえることができるようにさせることが一方法として示唆された。
氏名:村上 護
主題:自己調整学習に関する研究
本研究は、小学5年生から中学3年生の児童・生徒を対象とし、自己調整学習方略の使用度と自己効力感、及び学業成績との関係について検討したものである。自己調整学習方略測定尺度に対する回答をもとに因子分析を行った結果、11カテゴリーの自己調整学習方略が見いだされた。各方略ごとに、5(学年)×2(性)の2要因分散分析を行い、それらの要因による自己調整学習方略の使用度の差異を詳細に検討した。また、自己調整学習方略使用の動機づけと仮定される自己効力感と各方略使用度の相関関係を検討した結果、自己効力感の成功の予測次元において中程度の相関が示された。次に、自己効力感(高群・低群)と自己調整学習方略使用度(高群・低群)の2要因が、学業成績にどのように関係するかが検討された。5カテゴリーの自己調整学習方略について、高使用群の学業成績が有意に高いことが示された。
氏名:中村 成宏
主題:小集団学習における引っ込み思案な児童の社会的スキル訓練に関する研究
本研究では、引っ込み思案児の小集団学習事態下の相互作用を改善するために、引っ込み思案児の属する集団成員全員に社会的スキル訓練を実施した。研究Tでは、小集団学習事態の相互作用分析カテゴリーを作成し、小集団事態下の引っ込み思案児の特徴をとらえるとともに、ターゲットスキルを選定を行った。ターゲットスキルは、相手の話に「反応する(短い応答と確認・言い換え)」とした。研究Uでは、引っ込み思案児が属する集団成員5名(引っ込み思案児は2名)に、「反応する」ことをターゲットスキルとして社会的スキル訓練を実施した。その結果、1名の引っ込み思案児は、「短い応答」に該当する相互作用の出現頻度が増加した。もう一方の引っ込み思案児は、「短い応答」、「確認・言い換え」に属する相互作用の出現頻度が増加した。また、集団全体の相互作用もネガティブなものから、ポジティブなものに変容した。全体的考察では本研究の問題点を述べた。
氏名:江口 正樹
主題:児童の自己意識と課題解決場面における行動の自己調整に関する研究
本研究は、行動の自己調整を規定する個人差の要因として、自己客観視傾向という概念を想定した。概念的に近い自己意識理論の考え方を採用し、小学生用の自己客観視傾向測定尺度を作成した。6年生354名に対して調査した結果、私的自己意識と公的自己意識の2つに分化することが明らかとなった。次に、小学校6年生42名を被験者とし、たし算課題を遂行させた。行われた自己調整の内容の検討は、目標設定の仕方や得点とのズレ、および質問紙による事後評定をもとに行った。その結果、私的自己意識特性が高い児童は、課題解決場面において、行動の自己調整を行っており、自己効力感が高いことが確認された。
氏名:上木原 多輝子
主題:教師の賞賛が児童の内発的動機づけに及ぼす影響
本研究は有能感が高まると内発的動機づけも高まるという立場にたち、教師の賞賛という言語的報酬を用い、内発的動機づけを高める方法を実験的に検討した。賞賛条件は、能力賞賛条件、努力賞賛条件、統制条件を設定した。実験1では、学習中の賞賛場面を設定して賞賛条件の比較を行った。結果、努力賞賛条件は内発的動機づけを高めた。実験2では、賞賛直後の感情、有能感、内発的動機づけを測定する実験を行った。その結果、賞賛直後の感情、有能感、内発的動機づけに対する、賞賛内容の差異による影響を見いだした。有能感と内発的動機づけの関連を検証しながら、児童の努力概念と能力概念について明らかにする必要性があることなどが考察された。
氏名:宮田 聡
主題:中学校学級担任教師の指導行動に関する研究
副題:PM式指導類型との比較検討
本研究は、中学校における学級担任教師の指導行動を、「生徒の欠乏動機を充足する行動」と「生徒の成長動機を促進、援助する行動」の2次元で捉えた指導行動測定尺度(DG尺度)を作成し、その尺度により類型化した指導タイプが、外的基準変数である生徒の学級満足、成長動機、自尊感情に及ぼす効果について、PM尺度との比較を中心に検討を行った。 その結果、DG尺度の方がPM尺度より、外的基準変数に対する影響をより説明するものであり、教師の指導行動を適切に把握する上でより有用性をもつことが明らかとなった。また、パス解析の結果から、D行動が生徒の基本的欲求の一部分に強く影響し、G行動が間接的に成長動機や自尊感情に影響を及ぼすことが判明し、さらに、生徒の基本的欲求の充足が生徒の成長動機を規定するという因果関係が支持されたことなどから、担任教師の指導行動をD、Gの2次元で捉えることは妥当性をもつものと判断した。
氏名:奥野 喜之
主題:成績評価における高校教師の意思決定過程に関する研究
高校教師が成績評価活動において、どうすれば自己の指導の反省と改善を行えるか、その要因の検討が本研究の主目的であった。各教師の評価観、他教科の成績を示す一致性情報、及び他クラスの成績を示す弁別性情報の3要因を独立変数に設定した。従属変数として、評価を意思決定する教師活動の中でも、学業不振の原因を判断する8つの原因帰属因を設定した。序列づけが評価だという評価観の教師ほど、生徒の能力不足等の教師の外的帰属を高めると予想され、該当教科だけが不振の低一致性情報や、どのクラスも不振の低弁別性情報が提示された方が、教え方のまずさ等の内的帰属を高めると予想された。分散分析の結果、評価観ではなく、一致性情報や弁別性情報の組み合わせによって、教師の内的帰属が高まった。よって、高校教師の評価観の転換を迫るよりも、クラスや教科間の成績情報を公開し、その情報を読みとる機会を設けていくことが、評価改善につながるだろう。
氏名:大西 昌樹
主題:小学校算数科における学力の情意的側面の評価に関する研究
本研究では、算数科の学習における学力の情意的側面の評価に活かせる測定尺度の開発を試みた。小学生を対象にした自由記述をもとに尺度を構成し分析した結果,算数の学習に対する興味,回避,価値認識,積極的関与の4次元からなり,各次元5項目計20項目の情意的学力測定尺度が開発された。この尺度は,単元レベルの短期的な総括評価に適用できるものであり、信頼性と妥当性を兼ね備えた小学校高学年向きの測定尺度である。本尺度による児童の自己評定と担任教師による評定との関連を検討した結果,全体的には中程度の相関が示されたが,児童の評定と担任教師の評定の一致度には学級差がかなりあることが明らかになった。教師の個人差,評価観の違いなどの要因が予測できるが、その解明は今後の大きな課題となった。
氏名:後藤 芳郎
主題:授業における児童の課題意識に関する研究
副題:児童の価値観からの検討
本研究の目的は,授業の導入時に教師によって提示される問題を児童が課題として意識するのに寄与する児童の価値観を明らかにし,課題意識の成立に及ぼす児童の価値観の影響について実証的に検討することである。結果,@4年生には,自尊,有用,肯定的人間関係,リーダーシップ,向上の5つが,6年生には,優越,自力達成,肯定的友人関係,リーダーシップ,向上の5つの価値次元の存在が推測された。A4,6年生の両学年において,リーダーシップの価値次元が最も重要視されていた。B価値次元の弁別性が4年生より6年生の方が高いという価値観の発達的な違いも認められた。C国語は承認が,算数では自力達成の価値観が課題意識と強く関連すること,教師が児童の価値観を認識しその価値観に沿って問題を提示すれば,児童の課題意識を高めることができるという実証的な結果を得ることができた。
氏名:草場 聡宏
主題:学習意欲に影響を及ぼすコンピュータ利用学習環境に関する研究
コンピュータ利用学習環境に対する生徒と教師の認知を分析することで学習意欲を高めるコンピュータ利用学習環境について検討することを目的に研究を行った。その結果生徒はソフトウェア環境を学習支援、フィードバック、提示法の工夫、映像情報の革新性の4次元で認知していると解釈された。また男女とも利用形態が学習意欲に関係すること、生徒にとっての理想的なコンピュータ利用学習環境の要件は、映像情報の革新性次元が充実すること、フィードバック次元のズレを小さくすることにより学習意欲が高まることなどが示唆された。コンピュータ利用頻度による認知の差はみられなかった。一方教師はソフトウェア環境を学習支援、映像情報の革新性、激励・承認、親和性の4次元で認知していると解釈された。学習支援、映像情報の革新性次元が教師・生徒ともに共通する認知次元と解釈されたこと、教師の理想と生徒の理想の方向性に違いの無いことなどの示唆を得た。
氏名:山本 勉
主題:学習目標の自己設定と教師による能力帰属のフィードバックが児童の自己効力に及ぼす影響
本研究は、学習目標の設定と教師の原因帰属フィードバックによる児童の自己効力の変容を実際の授業場面で検討したものである。学習に対して児童を動機づけるには児童の自己効力が重要な要因であり、その自己効力を高めるには遂行行動の達成という情報源を用いて児童に成功経験を認知させることが不可欠である。そして、この成功経験を児童に強く認知させるためには、児童自身による適切なレベルの学習目標の設定と教師による能力帰属のフィードバックが効果的な方略になると考えられる。実験の結果、(1)教師による能力帰属フィードバックを与えられる児童は努力帰属フィードバックを与えられる児童より自己効力が高まる、(2)学習目標を自己設定する児童は学習目標を教師から与えられる児童より自己効力が高まる、ということが明らかにされた。本研究は、教師のフィードバックのあり方や児童の学習に対する教師の関わり方について重要な示唆を与えるものである。
氏名:西田 雅彦
主題:学習活動の自己評価が児童の内発的動機づけに及ぼす影響
学習のパースペクティブを児童にもたせるという状況のもとで、児童の内発的動機づけに及ぼす自己評価の影響を検討した。先行研究のレビューにもとづき、小学校中学年以上の児童が対象であることと学習のパースペクティブをもとせると自己評価が内発的動機づけに対して効果を発揮するであろうと仮説した。被験児は小学校の5年生の3学級に属する118人。クラス単位に3評価条件のいずれかに割り当て、算数の3単元で実施した。内発的動機づけの指標において、仮説を支持される場合と支持されない場合が起きた。矛盾する結果の理由として、教育現場では教師からの情報を正確で的確なものと認知する児童の一般的傾向に加え、学級の特殊性の反映であろうと考えられる。(1)自己評価が効果的であるためにはかなりの時間的経過が必要(2)自己評価の客観性を高める指導が大切等が本研究の結果をふまえ提言できよう。
氏名:亀谷 貴英
主題:Personal Teaching Theories of AET and JTE
副題:A Preliminary Study on Team-Teaching in Junior and Senior High School
The major purpose is to clarify and compare the characteristics of the Personal Teaching Theory (PTT) of Assistant English Teachers (AETs) and Japanese Teachers of English (JTEs) for Team-Teaching (TT) by asking 144 AETs,and 296 JTEs in JHS and SHS to rate their PTT. Factor Analysis was performed on each of 3 sets of data,i.e. JTEs',AETs',and the combined. Resultant findings were as follows: 1) The most frequent PTT profile of JTEs were Prohibition of Japanese,Relaxed Class,Vocal,Cooperative. 2) That of AETs were Special Class,Relaxed Class,Fluency,Prohibition of Japanese. 3) That of AETs and JTEs,analyzed from the combined data,were Relaxed Class,Prohibition of Japanese,JTE-centered,
氏名:上田 康夫
主題:教授内容に対する児童の理解状態と非言語的表出行動
本研究は教授場面や教授事態が日常の自然な状態に保たれるように十分考慮した上で,教授内容に対する児童の理解状態によって,児童の非言語的表出行動がどのように異なるのかを検討する。但し現場研究の制約から観察対象児を男児と限定している。26の非言語的行動分析カテゴリーを設定し,ビデオカメラに録画された観察対象児にどのカテゴリーの行動が生起しているのかを1秒1ユニットとして分析する。その結果,同じ非言語表出行動であっても児童によってその意味が異なることや,児童個人が異なった表出をしても教授内容の説明中か説明終了後かによってその意味が同じになることが認められた。
氏名:神谷 彰彦
主題:帰国子女の学級適応に関するアクションリサーチ
本研究は,一般校学級に編入してきた帰国子女に適応促進をサポートする役割を与えられたヘルパーをつけ,このような具体的方略が帰国子女の適応に及ぼす影響を検討することを目的とする。結果として,処遇群5名のうちヘルパーをつけたことによる学級適応促進の効果が顕著であったものは1名,ヘルパーをつけたためとは断定できないが学級適応促進が進んでいるもの1名,ヘルパーをつけられることを好まず学級適応が抑制されているもの1名,ヘルパーをつけられることを好まないが,学級適応が促進されているもの1名,学級適応が4月当初より良好でそのまま維持しているもの1名であった。準比較群6名は,ヘルパーをつけなくても3ヵ月後には学級適応しているものが4名,十分には適応していないものが1名,不適応状態のものが1名であった。多くの問題点が存在するが,帰国子女の学級適応は級友との交友関係の中で進み,一定の条件を満たした時にヘルパーの存在が帰国子女の早期学級適応に寄与することが示された。
氏名:山本 哲也
主題:教師の指名行動の変容が児童の学習意欲に及ぼす影響
本研究は,授業中の教師の氏名に関わる行動が児童の学習意欲,及び教師に対する児童の認知に及ぼす影響を検討する。特に,指名が少なく教師への態度が否定的な児童に対して,指名を増やし回答機会を多く与えればそのような児童の学習意欲や教師に対する認知が肯定的に編かするかどうかを実証的に検討することを目的とする。まず,授業中の指名回数には個々の児童によって大きな違いがあることを示し,次にその結果を踏まえ指名回数の少ない児童に対して指名回数を増加させるという処遇を施し児童の学習意欲の変容を検討した。授業において教師が児童に対して「適切」な発問のもとで指名回数を増やし,さらに児童の回答に対して「適切」な対応を行うならば,児童の学習意欲に好ましい影響を与えることが確認された。また教師の指名行動の変容は,児童の教師期待の認知に影響せず,授業への興味の高まりにつながると考えられる。
氏名:永田 彰寿
主題:学業不振時に及ぼす小集団学習の影響
副題:学習性無力感,学業不信感,原因帰属の変化からの検討
本研究は、学業不振児に及ぼす小集団学習の影響を2つの研究を通して検討することを目的とした。研究Tでは学業不振児の「無気力」な学習態度を規定する3つの要因を因子分析によって検討した結果、学習性無力感3因子、学業不振感2因子、原因帰属様式8因子が確認された。これらの結果に基づいて研究Uでは、協同的な小集団学習が学業不振児の3つの要因にどのような変化をもたらすのか分析・検討したところ、仲間との協同的な学習活動は学業不振児にとっても学業達成経験を享受できるため、自己統制感を高めるものだといえた。本研究は、学業不振が原因で無気力な学習態度を示す学業不振児に対して、彼らの自尊心を損なうことなく統制不能感を解消する教育的処遇として、小集団学習が有効であることの示唆を与えるものである。
氏名:澄田 俊成
主題:学級集団における児童の社会的地位に及ぼす教師介入の効果
本研究は学級集団において教師が児童相互の人間関係(交友関係)を改善・向上させるために,積極的に教師介入(教師による教育的処遇)し,児童の社会的地位に及ぼす効果を検討することを目的とする。まず,児童の社会的地位と性格・行動特性との関連を明らかにし,学級集団における児童の社会的地位を高めるために教師による教育的処遇方法を設定した。更にこの方法に従い担任教師(かつ実験者)がアクション・リサーチを行った。社会的地位を規定しているものとして責任感の次元の性格・行動特性が最も大きく寄与し次ぎに情緒の安定が寄与していることがわかった。級友から仕事や役割などに責任を持って果たすように認められるとかなり社会的地位が上昇していくと考えられる。
氏名:寺井 昭
主題:集団問題解決学習に及ぼす手段構成の効果
本研究は成員間の相互作用が高まる集団問題解決学習を用いて,2タイプの課題に応じた有効な集団構成の条件を,授業事態の中で実験的に検討することを目的とする。ソシオメトリックテスト及び診断テスト結果に基づき,同一クラスの男女各2名ずつの計4名で異質集団を構成し,通常の算数指導過程の中から選択した課題(練習課題2課題,実験課題6課題)を学級単位で実施し,集団問題解決を行った。実験後,質問紙への回答を求め,さらに,最後の課題実施の放課後に抽出グループによるインタビューを行い内観報告を求めた。収束的方略課題では相互選択なし条件が相互選択あり条件より適している。また相互選択なし条件で指示発言が多くなることから,司会者,リーダーの要因が影響していることが示唆された。発散的方略課題については収束的方略課題のような一貫した結果は得られなかった。無関連発言の相互選択あり条件,さらに,下位カテゴリーの発散的方略課題における相互選択あり条件で,集団討議の発言内容には個人差が関わっていたことも示された。
氏名:関 弘明
主題:教授学習場面における児童の非言語的行動と教師による理解状態の判断
本研究では,日々の授業の中で教師は,生徒の内面を表出する非言語的な行動をどのように捉えているのか,さらにその手がかりは,生徒側の要因(学年・達成水準)及び判断者側の要因(教職経験)によってどのように異なるかを検討することを目的とした。分析結果から,視線の向き,顔の向き,うなずきは,どの学年においても,教授内容が易しい時に,その生起頻度が多くなることが認められた。この4つの行動は,教授者側が比較的認知しやすく,より有効な手がかりであると考えられる。また,手の動きは,3年生の低達成水準群において難教授内容のときに,その頻度が多くなることが示された。理解度判断における有意な非言語的手がかりは,全体としてみると,視線の向きや顔の向きであった。学年別に見ると,1年生では両達成水準群とも視線の向きと顔の向きがともに理解状態を判断する有意な手がかりとなり,低達成水準群では,うなずきも先の手がかりほどではないまでも有意な手がかりとされていた。5年生では,視線の向きがH群の理解状態を判断する際の最も有意な手がかりとされ,低達成水準群においては特に,有意な手がかりは示されず視線の向きが相対的に有意な手がかりとして用いられることが認められた。教職経験との関連では,手がかり間に違いが認められなかったが,理解度判断の正確さにおいては,教職経験の短い群がより正確に判断する傾向にあった。
氏名:柳川 浩一
主題:マイコン使用が児童・生徒の心理的側面に及ぼす影響に関する研究
本研究は,テレビゲームが児童の心理的側面に及ぼす影響と,コンピュータの教育的利用であるCAI的利用が児童・生徒の心理的側面に与える影響をを明らかにすることを目的とした。研究Tでは,テクノストレス測定尺度の因子分析から「仲間との親和性」「否定的自己認知」「不安傾向」が抽出された。分散分析の結果,否定的自己認知次元において,テレビゲーム高頻度群が自己を否定的に認知しテクノストレスの症状があることが示唆され,テクノストレスの高低はテレビゲームの頻度だけでなく,子どもがどの程度社会的に支持されているかという要因も加味すべきことが明らかとなった。研究Uでは,CAI不安尺度の因子分析から,「不安・緊張」「苛立ち」の紳士が抽出され,分散分析の結果,使用形態の影響が示唆された。さらに,コンピュータ学習環境認知尺度の因子分析から,6つの因子が抽出され,重回帰分析の結果,故障の少ないコンピュータでCAI特性が発揮され,子どもの操作に適度な賞賛が与えられるソフトを使用させることなどが示唆された。
氏名:川崎 健二
主題:パソコンのワープロ的利用が生徒の文章作成に及ぼす影響に関する調査
本研究は,ワープロが思考の道具として機能するのか,またどういった思考活動に関係するのかや,実際の作文教育にワープロを使用することが,生徒に与える影響などを明らかにすることを目的とした。研究Tでは,文章作成スタイル評定尺度への反応から4つの因子が抽出された。分散分析の結果,「書き出しの気軽さ」の次元で文章量が多くワープロを高頻度で使用する者は,気軽に文章を書き出すことが示された。研究Uで,ワープロによる文書作成において「発案した内容や言葉を一旦書き出しておける」「画面上で修正しながら視覚的に吟味や検討ができる」という点で,思考の道具として機能し得ることが示唆された。研究Vでは,指導を伴うワープロ活用の重要性や,ワープロ使用によって文章の量や漢字含有率が高まることが示された。
氏名:川原 弘明
主題:教師の教育的態度と教授行動に関する研究
本研究は、教授行動を行おうとする教師の行動意図が、行動に対する態度と主観的規範という2つの心理変数によってどの程度規定されるかを検討することを目的とした。その結果、まず男教師は児童からの期待と管理職からの期待の影響を受けることが示されたのに対し、女教師は自己の行動に対する態度のみを重視することが示された。教職経験については、長期群は他の教職経験の群に比べて、管理職といった評価者からの期待に応えて、個々の児童に対する教授行動を多く行っていると示された。またセルフモニタリング傾向の高い教師は、自分の行動を状況に適合させる傾向があることを示した。
氏名:小野 浩亨
主題:教授場面における教師の視線行動が生徒による教師態度の認知に及ぼす影響
本研究は教授場面における教師の視線量と視線方向が受け手としての生徒にどのように認知されるかについて,検討することを目的とした。現実の授業における,生徒の教師認知の主な結果は次の通りであった。生徒に対する期待,親しみやすさの次元で,生徒は嫌悪群より好感情群が,また側方視より直視を肯定的に認知した。教えやすさ,温厚さ,根気強さ,聡明さの次元で嫌悪群のみが直視より側方視を否定的に認知した。活発さ,親しみやすさ,根気強さなどの次元では顔面表情の差異が他の要因と複雑に絡み合っていた。教師の印象について,生徒は全ての次元の笑顔条件においてのみ側方視より直視が肯定的に,また知的望ましさの次元では笑顔がない方が肯定的に認知されていた。授業の理解度では,教師の笑顔がある時,好感情群は嫌悪群より,また教師が笑顔で少ししか見ない場合,側方視より直視が理解できたと判断された。教師の視線行動に対する教師と生徒の認知の異同が,また授業事態の違いにおける生徒の教師認知が考察された。
氏名:杉田 和代
主題:教師による児童特性の認知が学習評価に及ぼす影響
本研究は、教師による評価が評価に直接関係しない子どもに関する情報(バイアス要因)に、どのように影響されているかという問題を明らかにすること、さらに教職経験のない学生による評価との比較を行うことによって、教師の評価の特徴を明確にすると同時に、評価において提示された観点の明瞭性によって、評価における歪みを減少できるのではないかとということをあわせて検討することを目的とした。その結果、教師と学生とのバイアス要因に違いがみられた。また教師では高バイアス群と低バイアス群との間に明確な違いがみられたが、学生には見られなかった。ゆえに、評価におけるバイアス要因の受けやすさは、教職経験が増えることによって増してくるものと考えられる。また評価の観点を明瞭にすることが、高バイアス群のバイアス情報による影響を減少させるための有効な方法であると考える。
氏名:石原 和博
主題:集団問題解決学習における解決ストラテジーの研究
本研究は,学習者が収束的特性を持つ課題に対して集団で問題解決にあたるとき,学習を効果的に成立される条件を明らかにすることを目的とした。課題関連条件TRC(task
related condition)が整備されたIGs(individual group strategy)条件では,討議の対象となった解決策は少数に絞られている傾向が示された。また,発言頻度,発言量ともに集団性成員の参加・貢献の偏りが小さい傾向が見られ,個人単位でのパフォーマンスの分析から,最適な解決策に対する蹴っている有数が最も多かった。さらに,自己の満足度,他成員の満足度に対する集団成員の認知とも高いことは明らかに示されなかった。これらのことから,TRCを整備しIG(group
strategy)ストラテジーを採用することが,学習を効果的に成立させる条件になり得ると考察できる。
氏名:溝口 敬
主題:教師期待効果に関する研究
副題:期待の形成に及ぼす児童特性の影響
本研究は,学力の期待と関連が強いとされる『自主性』『集中力』や,性格発達に関する期待と相関が高いとされる『従順』『協調性』などが,教師期待効果や態度の形成に及ぼす影響や,教師の個人差が期待の形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。その結果,次のようなことが明らかになった。教師は,学力,対人的特性,教師効力感,さらに,性格期待や担任希望および教えやすさの側面においても,児童の学力,対人的特性の影響を受けていること。学力期待では児童の性格特性に影響され,態度的側面においては対人的特性に影響を受けてた態度形成を行っていること。高効力感教師は学力期待,性格期待が高く,教師態度の形成においても児童を肯定的に認知していること。教職経験年齢の長短により期待形成や態度形成に差異が見られ,25年以上の教師は教師態度において,児童の学力の高低による影響を強く受けていた。このように,教師効力感の高低によって,教師の期待。態度の形成に差異のあることが示された。
氏名:山本秀毅
主題:大学生の体育会系運動クラブにおけるキャプテン・副キャプテンの役割行動に関する
研究
氏名:小川 由香
主題:「いい子」傾向を持つ子どもの現実自己と理想自己および義務的自己の関連に関する研究
氏名:金房 優理
主題:目の大きさと角度が初期印象に及ぼす影響
氏名:三瀬 久美子
主題:大学生における援助要請行動に関する研究
氏名:岩田 久美子
主題:コミュニケーション・メディアと自己開示に関する研究
副題:−非自己開示動機の低減という側面から−
氏名:世古 香織
主題:友人関係における児童の消極的同調行動に関する研究
氏名:倉永 敏子
主題:印象形成における認知的努力と第三者情報による印象の変容
氏名:大谷 たえ子
主題:共感性と傍観者の存在が児童の向社会的行動に及ぼす影響
氏名:松末 香織
主題:中学生における孤独感と対処行動に関する研究
氏名:濱田 真由美
主題:児童期における父親の養育態度と子どもの社会的スキルに関する研究
氏名:高木 倫枝
主題:対人関係における非自己開示動機に関する研究
氏名:小倉 明子
主題:自尊感情及び社会性指向性とセルフ・モニタリングに関する研究
氏名:藤田 笑加
主題:学級集団における社会的欲求の充足可能性に対する児童の認知とスクール・モラルに関する研究
氏名:早田 奈穂子
主題:児童の努力概念に関する研究
氏名:田中 昌史
主題:授業場面における教師の指導行動と児童の学習意欲に関する研究
氏名:増田 知子
主題:大学生の色彩指向に関する研究
氏名:阿野 真理恵
主題:対人関係における初期印象の変容過程に関する研究
氏名:松田 葉子
主題:小学校教師の指導行動と児童の学習意欲に関する研究
氏名:三原 史子
主題:大学生におけるソーシャルサポートに関する研究
氏名:阿部 由佳
主題:教師の指導行動と児童の自主性に関する研究
氏名:上村満 里
主題:開示者のパーソナリティーについての開示者・受け手による判断の一致度と自己開示動機との関係について
氏名:恵良 博美
主題:児童の自己概念に関する研究
氏名:藤井 雅子
主題:児童・生徒の自己効力感と将来の夢に関する研究
氏名:木村 智子
主題:聞き手の非言語的行動が話者に及ぼす影響
氏名:柴田 智美
主題:対人関係における自己開示に関する研究
氏名:小池 五月
主題:学習場面における目標の自己設定過程に関する研究
氏名:守屋 典枝
主題:問題解決場面における解決案算出過程に関する研究
氏名:斉藤由布
主題:学習意欲に影響を及ぼす教授行動に関する研究
氏名:石田 貴子
主題:児童・生徒の援助意図の規定因に関する研究
副題:主に援助者の動機の観点から
氏名:河野 美穂
主題:テスト返却時のフィードバック内容が児童の学習意欲に及ぼす影響
氏名:桝井 陽子
主題:教員養成大学学生における職業選択の規定因に関する研究
氏名:松本 徹也
主題:達成動機の規定因としての自己概念に関する研究
氏名:尾崎 英子
主題:創作ダンス指導過程に関する社会心理学的研究
氏名:石田 留美
主題:パーソナリティの認知における次元ウェイト
副題:認知者のself-esteemとの関連
氏名:辻井 ゆかり
主題:社会的促進に関する研究
氏名:松田 恵
主題:リーダー行動がフォロアーの反応に及ぼす影響に関する実験的研究
氏名:村上 勇造
主題:教師の魅力に関する研究
氏名:長谷川直子
主題:学級環境に関する社会心理学的研究